応急処置の方法
傷には,きり傷、刺し傷,すり傷などいろいろあり,その手当法も異なるので注意が必要である。
きり傷
- まず出血を止めることが必要である。
損傷部を清潔なタオルやガーゼで強く巻いて圧迫して止血する。
このとき,長時間圧迫により末梢部位が痛むことがあるが,そのときは圧迫を一時的に緩めてから再び縛って圧迫する。
- 傷口が汚れている場合は,きれいな水で洗い流す。
- 傷口にガラスや金属片があれば,できるだけ取り除くことが望ましいが,それを除去することによって,かえって出血を増大させることもあるので注意を要する。
- 出血が長引くようなときは,病院(外科)へ行くこと。
刺し傷
- 血を少し絞り出して,ばい菌を押し出す。
- 消毒ガーゼなどをあて,包帯をする。
- 傷口が小さく,出血量が少なくても,深い所で化膿することがあるので注意すること。
すり傷
- こすらないように注意して,水道の水で洗い流す。
- 消毒液を塗る。
- 消毒ガーゼをあて,包帯をする。
- 痛みが激しいときは,病院(外科)へ行くこと。
はさみ傷
- 急いで冷やす。
- 内出血や骨折の可能性もあるので,注意すること。
ガラスによる傷
- すぐに止血する。
- 破片が刺さった時は,血管壁を貫通している恐れもあるので,抜かずに病院へ行くこと。
- 細片を浴びた時は,そっと払い落とし,皮膚には触れないようにして病院へ行くこと。
骨折
- 患部が動かないように副木等で固定し,医師の手当を受ける。
- 上腕骨折の場合,骨折部を肩の方に押し上げないように副木をあてて固定し,三角布で前腕を吊す。
- 足首骨折の場合,靴や靴下を脱がせ,副木をあてて,三角布で固定する。
- 肋骨骨折の場合,呼吸が苦しくなるので,布団等にもたれるようにして,呼吸を楽にさせる。
- 膝・大腿・下腿の骨折の場合,骨折部分の衣類を切り取り,副木と三角布で固定する。
捻挫
- 冷湿布を施し,弾性包帯を圧迫するように巻く。
- 包帯のまま冷水に30分ほど冷やす。
- 乾いた包帯に取り替え,患部を高くして氷のうなどで炎症がおさまるまで冷やす。
- はれがひどい場合は,医師の手当を受けること。
脱臼
- 患部を冷やす。
- 包帯や三角布で動かないように固定し,医師の診断を受けること。
- 血管や神経を痛めることがあるので,自分で関節をもとに戻そうとしないこと。
打撲傷(打ち身)
- 手足の軽い打撲は,冷やすことによって痛みや,内出血が軽くなる。
ひどい打撲でショック症状になったら,骨折や内臓損傷のおそれがあるので,保温し早急に医師の所へつれていくこと。
- 頭を打って,意識不明,吐き気,嘔吐,鼻・耳・口からの出血などがある時は,重傷である。直ちに救急車を呼ぶこと。
- 打撲した部分を動かすと内出血が多くなり,苦痛も増すので,その部位を安静にし,手足の場合は心臓より高くすること。
- 出来るだけ早く流水(水道水でよい)で冷却するのが最も効果的である。ただし,傷に直接強い水圧を当てないこと。
- 冷却する場合,たえず移動させて,同一部位が冷えすぎないように注意すること。
- 重傷の火傷の場合,清潔なタオルなどで火傷面を覆い,できれば冷却しながら病院に連れて行くこと。
- 衣類の上から火傷をした場合は,無理に脱がせないで,そのまわりを切り取るなどして冷却すること。
- 火傷面にチンク油や軟膏などの油剤を塗ると,病原菌に感染しやすくなるので,使用してはいけない。
やけどの深さと症状
やけどの深さと症状
深さ |
症状 |
外見 |
症状 |
1度 |
表皮やけど |
皮膚が赤くなる。 |
ヒリヒリと痛い。 |
2度 |
真皮やけど |
水ぶくれができる。
ぐちゃぐちゃになる。 |
強い痛みとやけるような感じ。 |
3度 |
全層やけど |
皮膚が白くなり,焦げる。 |
痛みをほとんど感じない。 |
- 熱疲労,熱けいれん,日射病,熱射病,低血糖,薬物中毒などのうちでどの原因によるかを見極める。
- 風通しのよい,涼しい場所に移す。
- 衣類を緩めて楽に寝かせ,毛布などで保温する。
- 嘔吐がある場合,顔を横向きにさせ,吐いたものが気道を塞ぐのを防ぐ。
日射病(熱射病)
- 直射日光の下,あるいは高い湿度の所で激しい運動をしたとき等になる。
- 体温が非常に高くなり,汗もでなくなり,顔が赤く,頭痛,めまい,吐き気がある。
- 日陰などの風通しのよいところに移し,衣類を脱がし,冷たいタオルで体をふく。
熱疲労(熱けいれん)
- 体育館等の湿度の高い場所で,過度の運動をした場合などで,おこすこともある。
- 汗の出方がひどく,体温はそれほど高くならない。顔色が青白く,頭痛,めまい,吐き気がある。
- 風通しのよい涼しい場所に移し,衣類をゆるめ,楽に寝かせ,毛布などで保温する。意識があれば薄い食塩重曹水を飲ませる。
いずれの場合も,意識を失い,けいれんをきたすものは危険であるから,直ちに救急車を呼ぶ。
日射病・熱射病と熱疲労・熱けいれんの症状
日射病・熱射病と熱疲労・熱けいれんの症状
|
日射病・熱射病 |
熱疲労・熱けいれん |
皮膚 |
熱っぽく乾いてくる。 |
汗でべとべとになる。 |
顔色 |
赤くなる。 |
青白くなる。 |
脈拍 |
早い脈が大きく打つ。 |
弱く,早くなる。
(ふつうのこともある。) |
体温 |
非常に高くなる。 |
だいたいふつう。 |
全身症状 |
頭痛,めまい,吐き気。
ひどいときには意識不明になる。 |
頭痛,めまい,吐き気,脱力感。
ひどいときには意識不明になる。 |
- 昏睡状態で体温が下がり,脈が弱いときには,一刻も早く救急車を呼ぶ。
- 嘔吐がある場合,顔を横に向け,充分に吐き出させる。
- 一気飲み,強要飲みなどをさせないことが事故防止のうえで何よりも大事である。
皮膚に付着した場合
- 直ちに大量の水で洗う。
- 濃硫酸のように水と反応して発熱するものは,はじめに乾いた紙や布で素早く拭き取った後,大量な水で一挙に流す。
目に入った場合
- まぶたを広げて流水で洗う。
- 洗面器の水に顔をつけ,まばたきを繰り返すのもよい。
飲み込んだ場合
- 一刻も早く吐かせる。
- のどの奥に指を突っ込んで吐かせる。
- 胃が空だと吐きにくいので,大量の水又は牛乳を飲ませて吐かせる。
ただし,強酸,強アルカリ腐食性物質を飲み込んだときは,胃に穴があいたり,吐き出したものが気道に入る恐れがあるので,早急に医師の手当を受けること。
吸引した場合
- 被害者を直ちに新鮮な空気のところに移し,衣類を暖めて安静にする。
- 場合によっては酸素吸入や人工呼吸を行う。
- 呼吸はしているが意識がない場合は,横向きに寝かせ,吐き出したものにより窒息しないようにする。
- 発見者はいきなり部屋に飛び込まないで,ぬらしたタオルなどで口と鼻を覆い,すばやく行動する。
- 窓やドアを開けて換気をはかる。
- 事故者をすぐ風通しのよい場所に救出し,衣類を緩めて呼吸しやすくする。
- ガス漏れの場合は,元栓を締めてガスの発生源を断つとともに,火気及び電気にも気をつける。
- 病院,救急車に連絡する。
- 意識があっても,動かしたりすると状態を悪化させるので注意する。
- 直ちに電源を切り,感電者を電流から解放するとともに,新鮮な空気のあるところに移し,衣類を緩めて身体全体を楽にさせる。
- 救助者が感電しないように,乾いた棒や布,皮製手袋などを用いて電線や器具を引き離す。
- 感電者が呼吸停止していたり,あるいは呼吸が浅いときは人工呼吸や心臓マッサージを施す。
- 火傷,外傷のあるなしにかかわらず,早急に医師の手当を受ける。
- まず意識の有無,呼吸の有無を調べる。
- 呼吸がなければ,まず気道確保をして人工呼吸をする。
- 人工呼吸を続けながら保温を十分にして救急車を待つ。
(注釈)人工呼吸の途中で水を吐いたら,気管に入らぬように顔を横向けにして,窒息させないように注意する。
胃の中に大量の水を飲み込んでいるため十分呼吸ができなければ,体を横向きにし,上腹部を軽く押さえて水を吐かせる。
ぬれている衣類は,着替えるものがあれば取り替える。ないときは,脱がすとかえって寒いので,そのまま湿り気をよくふき取って毛布等で包む。
- 患部をぬるま湯(40℃くらい)の中に20~30分浸す。
- 寒剤が皮膚に付着してはがれないときは,そのまま流水につけるか,温風をあてて自然にはがれるのを待つ。
- 正常の温度に回復しても,患部を高くして露出したまま安静に保つ。
- 温湯が用意できない場合,あるいは患部が耳などで,浸すことができない場合は,手や脇のような身体の暖かい部分で暖める。