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越秋祭に寄せて(令和5年10月)


 

 10月28日(土)と29日(日)の2日間、本学の大学祭「第41回越秋祭」が開催されます。昨年までの3年間は、新型コロナウイルス感染症の蔓延にともない、中止または部分的な実施になっていましたので、本格的な実施は実に4年ぶりのことです。4年ぶりということは、現在の4年生も、まだ一度も本格実施を体験していないということになります。そうした中で、実行委員会を組織し、準備をしてくださっている学生諸君の行動力に敬意を表します。また、それをお支えいただいている教職員の皆様、経済的なご支援をいただいている地域の企業や個人の皆様にも厚く御礼申し上げます。

 私が本学に着任したのは約28年前ですが、年度途中での採用でしたので、着任してすぐに越秋祭がありました。当時、中庭に、たぶんお借りしたものだと思いますが、各小中学校のテントが張られていて、教育大学らしさを強く感じました。この越秋祭の前に、書道部から色紙作品の提出の依頼があり、悪筆の私は「いやだな」と思いながらも、提出しました。しかし、後になってすべての教員が出しているわけではないことを知りました。その後は、今に至るまで、提出してはおりません。

 しかし、今年は、4年ぶりの本格開催です。しかも、書道部から届いた依頼状の宛名は「学長」となっています。「カナ釘流であろうが、ミミズ文字であろうが、出さないといけないのではないか」という思いにさいなまれているところです。とりあえず、学生の皆さんが書写で使っているであろう「上越教育大学」の名入りの筆を大学売店で購入し、ひそかに練習を始めてみましたが、こんな泥縄でなんとかできるわけもなく、「あぁ」と頭を抱える毎日です。

 書く内容も考えなければなりません。いろいろあたってみて、老子の「見素抱樸(けんそほうぼく)」にしようと思います。これは「素を見(あら)わし、純朴さを抱く」というような意味です。「樸」という字は、加工されていない原木を意味しますが、この語によって、ありのままの自然な姿を言い表しています。この四字熟語の後には、「少私寡欲」(利己心を少なくし、欲を少なくする)という語句が続き、人間としての生き方・在り方の理想が述べられています。これは、『老子道徳経』の第19章に記されています。ちなみに、私は道徳教育論を専門としていますが、日本の道徳教育の「道徳」という言葉は、この『老子道徳経』に由来すると言われています。とはいえ、道徳教育の内容がここに書かれているわけではありません。上巻の初めが「道」についての話から始まり、下巻が「徳」についての話から始まるので、「道徳経」と名付けられているのです。

 色紙には、氏名印や雅号印、引首印も押そうかと思います。これは急いで注文しないと間に合いませんね。でも、赤い印で飾ろうとするのは、「見素抱樸(けんそほうぼく)」に反するでしょうか。

 「ここにこれだけのことを書くのだから、本当は、相当な自信があるにちがいない」と誤解される方もいらっしゃるかもしれません。が、事情はその逆で、ここにこれだけ書いておけば、いやでも出さざるを得なくなるだろうという、自分を追い込むための手段なのです。

 当日は、上越教育大学越秋祭にお越しいただき、私の拙い書をご笑覧ください。

令和5年10月17日
学長 林 泰成

学長写真

このページは上越教育大学/広報課が管理しています。(最終更新:2023年10月17日)

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